犬と猫の病気と食事
肝臓病
原因、症状、治療、食事管理について
気づいた時には犬や猫の病気が進んでいるかもしれません。
肝臓は我慢強く、なかなか症状を現しません。元気そうでも定期的に検査を受けることで早期発見することもできます。
犬と猫の肝臓のはたらき
犬と猫の肝臓にはたくさんの機能があり、生きていくために欠かせない臓器です。
犬と猫の肝臓は、栄養素の分解、合成、貯蔵を行なったり、体の中の毒素を分解して無毒化したりといった、さまざまな重要なはたらきをする器官です。
肝臓は機能的に予備能力(余力)が高く、再生能力の高い臓器です。そのため、肝疾患(肝炎や肝機能の低下など)があっても症状が現れにくく、症状が出た時にはかなり進行していることも多いのです。そのため、「沈黙の臓器」などと呼ばれることもあります。


犬と猫の肝臓病(肝疾患)とは?
肝臓に炎症が起きたり、細胞が壊れたり、細胞に脂肪がたまりすぎるなどして、本来のはたらきができなくなることを肝臓病(肝疾患)といいます。ただ、肝臓は予備能力の高い器官でもあり、症状が現れるのはかなり進行した状態になってからです。そのため、早期発見が難しい病気といえます。
犬と猫の肝臓病の症状とは?
肝臓病になると、栄養障害や解毒機能の低下などにより体のいたる所に障害が起こります。症状が進むと毒素が脳に影響し、肝性脳症などの病気になってしまいます。
肝臓病は初期であれば無症状のこともありますが、食欲がなくなる、体重が落ちる、元気がなくなる、白目や歯グキが黄色になる(黄疸)などの症状があります。しかしこれらは、なかなか気が付きにくいものです。犬や猫の肝臓の異常は血液検査によってわかります。そのため、潜んでいる病気を発見するには定期的な健康診断が重要です。
下記のような肝臓病を思わせる症状がみられたら、病気がかなり進んでいる可能性もあるので、すぐに病院に連れて行きましょう。

犬の肝臓病、猫の肝臓病の原因
犬と猫の肝臓病はさまざまな原因によって引き起こされます。
肝臓病(肝疾患)とは肝臓の機能が損なわれた状態のことの総称で、多くの場合、原因を特定することは困難です。細菌やウイルスなどの感染や長年の負担、他の病気の影響や特定の犬種によくみられる遺伝性のもの、薬物、毒物、腫瘍や外傷なども原因になりえます。またさまざまな原因が複合していることも考えられます。
犬や猫のさまざまな肝臓の病気
感染性の肝臓病

・ウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫などが肝臓に侵入・感染することで炎症や障害が起こる病気
・発熱、食欲不振、嘔吐、黄疸などに加え、慢性化すると肝機能低下による神経症状が見られることがある
慢性肝炎
・原因が不明なケースが多い肝臓病(代謝性、感染性、中毒性、自己免疫性など)
・初期の段階では症状が出ないことが多いですが、進行に伴って無気力、食欲不振などの症状が見られることがある
銅蓄積性肝臓病
・銅がうまく代謝・排出されず、肝臓に過剰に蓄積されることによって、肝細胞が障害を受けて炎症を起こす遺伝性の病気
・放置すると慢性肝炎、肝硬変、肝不全へ進行する可能性があるため、発症リスクが高い犬種(ベドリントン・テリア、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、スカイ・テリアなど)は特に注意が必要

中毒性肝炎
・薬剤、毒物などによって肝機能が損なわれる病気
・毒物は一部の身近な植物や食品にも含まれ、大量に摂取した場合は症状が急激に進行することがあるため、ペットが触れることがないようにすることが大切
肝臓腫瘍によるもの
・肝臓ガン(肝臓自体にできる原発性肝がん、他の臓器から転移して起こる転移性肝がんなど)
・肝臓ガンに関連した二次的な肝機能障害(慢性的な炎症、腫瘍による圧迫によって発生)
肝リピドーシス(猫)
・体脂肪が肝臓に異常に蓄積されることで、肝機能が低下する猫に多い肝臓病
・過激なダイエット、ホルモンの異常など原因はさまざまで、食欲低下、嘔吐、筋肉量の低下、黄痰、体重減少などの症状が見られることがある
猫の肝リピドーシスについて
猫の場合、何も食べないことが1日以上続いたら、すぐに動物病院に相談してください。
猫の肝リピドーシスは一般に脂肪肝とも呼ばれる病気で、さまざまな原因によって、脂肪が過剰に肝臓に集まってしまう病気です。過激なダイエットや引っ越しなど環境の変化によって、とくに太っている猫が何も食べなくなることにより起こることも多い病気です。猫が何も食べないことが一日以上続いたらすぐに動物病院に相談しましょう。
治療は十分な栄養補給が基本ですが、食欲を全く無くしているケースも多いので、その際には自分できちんと食べられるようになるまで入院し、カテーテルを使って、胃に栄養分を直接送り込み、強制的に食事をとるようにすることもあります。
門脈 – 体循環シャント(犬)
・肝臓を通るはずの血液が直接体内を巡る異常で、有害物質が解毒されずにさまざまな異常を引き起こす病気
・先天的なものが多く、その症状には行動変化などの神経症状、嘔吐や下痢などの消化器症状などさまざま
犬と猫の肝臓病の治療
肝臓病の診断は、まず血液検査でALTやASTなどの肝臓酵素の値を調べることから始まります。もし異常が見つかれば、次に超音波検査やX線検査を使って、肝臓の大きさ、形、そして内部の状態を詳しく確認します。さらに、より正確な診断が必要な場合は、肝臓生検を行い、肝細胞の状態や病気の進行具合を直接調べることもあります。

犬と猫の肝臓病(肝疾患)はさまざまな要因で引き起こされます。この病気は肝臓自体よりも他の病気が原因で起こるケースも多いため、その場合はまず、原因となっている病気の治療が必要になります。肝臓は再生が可能な臓器なので、肝臓にかかる負担を少なくして、再生に必要なことを適切に行えば、健康な肝細胞が増えて肝機能を元に戻すことも期待できます。
犬と猫の肝臓病の食事管理
犬猫の肝臓病の治療において、食事の管理は重要です。そのポイントをチェックしてみましょう。

小腸で吸収された栄養素は門脈から肝臓に入り、そこで代謝されてエネルギーや体を作るもとなどになります。ところが肝臓病になると吸収した栄養素をうまく利用できなくなるため、痩せてしまいます。これを避けるためには肝細胞の再生を助けるためのタンパク質が必要になります。しかし重度の肝臓病では、タンパク質を代謝したときにできるアンモニアが解毒できなくなり、高アンモニア血症のリスクが高まります。これを避けるにはタンパク質の量を制限する必要があり、この2つを両立させなければいけません。そのため肝臓病に用いられる食事療法食は、消化性の高いタンパク質を用い、摂取量を適切に調整する必要があります。
肉食動物である猫の場合はもともと高タンパクの食事を必要とするため、高アンモニア血症がみられる場合以外はタンパクを制限することはまれです。肝リピドーシスの場合は脂肪の量を制限します。
エネルギーとカロリーとは
正しい食事管理や肥満予防のためにも、理解しておきたいのが摂取するエネルギーやカロリーのこと。けれども、意外と混同されやすい「エネルギー」と「カロリー」という言葉。違いは何なのか、整理してみましょう。
「エネルギー」とは、生物の活動に伴って吸収されたり消費されたりする熱量のことです。主に摂取する食物から得られる栄養学的熱量や、運動や代謝によって消費される熱量を指します。
そして、その生理的熱量(=エネルギー)の量を表す単位が「カロリー」です。1カロリーは、1グラムの水の温度を1度上げるために必要な熱量とされます。
ところが、その単位である「カロリー」が、生理的熱量(=エネルギー)を表す名詞として一般に通用するようになっています。たとえば「カロリー制限」や「低カロリー食」という言葉などです。そのためによく混同されているようです。
食事に含まれる「エネルギー」には、厳密にはいくつかの段階に分けられています。
(GE:Gross Energy)
食物中に含まれる総エネルギー量。フード中のエネルギー総量は、フードを燃焼させ、その熱量を計測することによって得ることができます。
(ME:Metabolisable Energy)
よくペットフードの成分保証値の下に記載されている「代謝エネルギー」。食物を摂取しても、その食物に含まれている総エネルギーの全てを、動物は利用することはできません。一部は、糞便(ウンチ)や尿(オシッコ)の中に失われます。実際に動物が利用できるエネルギーを「代謝エネルギー」といいます。
犬・猫用食事療法食のポイント
犬や猫の肝臓病に用いられる犬猫用食事療法食は下のような点に配慮してつくられています。
- 犬・猫の肝臓に負担をかけないように、消化性の良い良質なタンパク質を適正な量使用しています。
- 犬や猫の肝臓病に対応するために、栄養素を調整しています。
