犬と猫の病気と食事

下部尿路疾患

今日のおしっこは、いつもと変わりがありませんか?

犬や猫のおしっこは身体の状態を表すバロメーターです。おしっこの回数、量、色、排尿時の姿勢などを日頃から観察しましょう。

犬と猫の下部尿路疾患ってどんな病気?

尿道や膀胱に関する疾患を総称して下部尿路疾患と呼びます。

犬と猫の尿は腎臓から尿管を通って膀胱にたまり、尿道を通じて外に出されます。この尿路のうち、下部尿路(膀胱から尿道の出口)に起こる病気のことを下部尿路疾患といいます。犬や猫において多いのは、膀胱や尿道に砂や石のような物質(結石)がたまってしまう「尿路結石症(尿石症)」という病気です。結石に刺激されることによって膀胱が傷ついて痛みが出たり、おしっこがしにくくなったりします。特に尿道に詰まり、おしっこが全く出なくなると、非常に危険で命にもかかわります。
また、猫に多いのは特発性膀胱炎と言われています。再発を繰り返すことが多く、とても注意が必要です。

犬と猫の尿路

犬と猫の膀胱炎・尿路結石が疑われる症状

以下のような場合は膀胱炎や尿路結石かもしれません。
すぐに動物病院へ連れて行きましょう。

犬と猫の尿路

猫の特発性膀胱炎について

猫の特発性膀胱炎は結石や尿路感染症がみられない、原因がよくわからない膀胱炎です。再発を繰り返すことも多く、猫の下部尿路疾患の約60%を占めるといわれています。

猫の下部尿路疾患

どのような猫に発生するのか

環境中の猫のストレスが大きな要因と考えられており、他の飼育動物のストレス、家族の留守や来客、気候の変化、運動不足、肥満、トイレの位置やトイレ砂の種類の変化、食事の変化、入院や手術のストレスなど様々な要因が影響していると言われています。

どのような治療(管理)をすれば良いのか

通常の膀胱炎の投薬治療(抗炎症剤など)に加え、環境中のストレスを少なくすることが必要です。ストレス発散のために猫の隠れ場所を作ることや、キャットタワーやおもちゃを与えることも有効です。またトイレの数を増やしたり、場所を変えたりしておしっこを我慢させないよう工夫しましょう。猫はもともと成分が濃い尿を作るため、尿を希釈するためにウェットフードや飲水量を増やすように配慮されたドライフードを活用するのも良いでしょう。

犬と猫の尿路結石の種類

犬の結石、猫の結石にはその成分によっていろいろな種類があり、代表的な尿路結石にはストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石とシュウ酸カルシウム結石というものがあります。犬の場合も猫の場合もこの2つの結石で尿路結石の80%以上を占めています。

犬と猫の代表的な尿路結石

代表的な尿路結石

その他の尿路結石

その他の尿路結石

猫の尿路結石について

猫の尿路結石について詳しく見ていきましょう。

猫の尿路結石の原因

猫の尿路結石の主な原因は以下のようなものです。

おしっこの量が少なくなる(濃くなる)

おしっこの量が少なくなる(濃くなる)01

猫の下部尿路疾患は、水や食事から得られる水分が不足することが原因で起こることが多いとされています。猫のおしっこは濃くてにおいが強いですが、もともと砂漠で生息していた猫は、水を飲む量が少なくても生きることができるように濃いおしっこをつくります。結石をつくる材料となるミネラルは、おしっこが濃くなると結石をつくりやすくなります。このためおしっこが濃い猫はもともと結石をつくりやすい動物といえます。一方おしっこが濃いことには細菌に感染しづらいという側面があります。

おしっこの量が少なくなる(濃くなる)02

猫が太ってしまってあまり動かなくなったり、季節の変化などの影響で水を飲む量が少なくなると、更におしっこが濃くなり、ますます結石ができやすくなってしまいます。

また、猫に消化が悪い食事を与えてしまうと便(うんち)に水をとられてしまい、おしっこのための水分が減っておしっこが濃くなる原因となります。

猫のおしっこの中のミネラルなどの量が増える

おしっこの中のミネラルなどの量が増える

おしっこの中にマグネシウムカルシウムなどのミネラルが多くなると、それらを材料とした結石ができやすくなります。

アルカリ性のおしっこ

アルカリ性のおしっこ

猫の尿路結石のなかでストルバイト結石は、おしっこがアルカリ性に傾いてしまうとできやすくなります。

猫の尿路結石の治療

猫の尿路結石の治療

猫の結石の種類によって異なりますが、内科的に溶かすことができない結石の場合や、結石が大きくなってしまった場合は手術によって取り除くことがあります。
また、各ミネラル成分やイオンバランスを特別に調整した下部尿路疾患用の療法食に切り替えることで、おしっこの状態を整えることがとても大切です。ストルバイト結石の場合はおしっこのpHを整えてあげることで、おしっこの中で結石が溶けることが期待できます。

毎日のトイレチェックを欠かさずに!

猫の場合、トイレにトイレ砂などを使っているご家庭も多いと思います。トイレ砂は、とても便利なのですが、おしっこの状態を確認しにくいものもあります。また、多頭飼育をしている場合や、外へ自由に出られる環境での飼育の場合も、おしっこをちゃんとしているかどうか確認しにくいものです。でも結石ができておしっこが出なくなると、急性腎不全となって尿毒症など深刻な状態を引き起こします。おしっこに頻繁に行く、トイレの中で鳴くなどの行動が見られたら、ちゃんとおしっこが出ているかどうか、確認するようにしましょう。

犬の尿路結石について

次に犬の尿路結石について見ていきましょう。犬の結石は猫の場合とは少し違いがあります。

犬の尿路結石の原因

犬の尿路結石の主な原因は以下のようなものです。

細菌に感染している

犬のストルバイト結石の一番大きな原因は、尿路(膀胱や尿道など)にブドウ球菌などの細菌が感染することです。菌が出す酵素によってアンモニアができ、これによっておしっこがアルカリ性に傾き、ストルバイト結石ができやすくなります。メスの場合、尿路が短いので外から入ってくる細菌の影響を受けやすく、犬のストルバイト結石はメスに多くみられます。

アルカリ性のおしっこ

アルカリ性のおしっこ

細菌に感染していなくてもおしっこがアルカリ性に傾いていればストルバイト結石ができやすくなります。

犬のおしっこの中のミネラルなどの量が増える

おしっこの中のミネラルなどの量が増える

おしっこの中にマグネシウムカルシウムなどのミネラルが多くなると、それらを材料とした結石ができやすくなります。

犬のおしっこの量が減る

おしっこの量が減る 01

太ってしまってあまり動かなくなったり、季節の変化などの影響で水を飲む量が少なくなると、おしっこが濃くなり、ますます結石ができやすくなってしまいます。

おしっこの量が減る 02

また、犬に消化が悪い食事を与えてしまうと便(うんち)に水をとられてしまい、おしっこのための水分が減っておしっこが濃くなる原因となります。

犬の尿路結石の治療

犬の尿路結石の治療

結石の種類によって異なりますが、内科的に溶かすことができない結石の場合や、結石が大きくなってしまった場合は手術によって取り除くことがあります。細菌に感染している場合は、抗生物質などが処方されます。
また、各ミネラルバランスやイオンバランスを特別に調整した下部尿路疾患用の食事療法食に切り替えることでおしっこの状態を整えることがとても大切です。ストルバイト結石の場合はおしっこのpHを整えてあげることでおしっこのなかで結石が溶けることが期待できます。

メス犬の尿路結石は要注意!

犬の尿路結石はメスに多く見られる傾向があります。これはメスのほうが細菌性の膀胱炎を起こしやすく、この細菌性の膀胱炎が尿路結石へとつながりやすいからだといわれています。ただ、メスの尿路結石の場合、小さな石は尿と一緒に流れ出てしまうことが多く、そのため発見が遅れやすいのです。気付いた時には大きな結石が出来ていたというケースも多く見られるので、普段からおしっこの量や状態をよく確認するようにしましょう。

犬と猫の下部尿路疾患の食事管理

尿路結石の治療には食事(フード)管理がとても重要です。

犬用・猫用食事療法食のポイント

下部尿路疾患に用いられる食事療法食は、以下のような点に配慮してつくられています。

①結石の原因となる物質の量を少なくすることに配慮しています。

食事中のマグネシウム含有量

おしっこの中にマグネシウムなどのミネラルが多くあると、それらを材料とした結石ができやすくなります。尿路結石症に対応した療法食はマグネシウムなどの各ミネラル成分が調整されています。

②おしっこの性状(pH)を結石のできにくい範囲にするように配慮しています。

おしっこの性状(pH)

ストルバイト結晶は酸性のおしっこの中では溶けやすいという性質があります。そのため、尿のpHを酸性に保てばストルバイト結石ができにくくなります。療法食はおしっこの性状を整えるためにミネラル成分とイオンバランスが調整されています。

③おしっこの量を確保するように配慮しています。

おしっこの量

体にとりいれる水分の量が少ないとおしっこの量が減り、濃くなっていってしまいます。おしっこの量が減ることは結石のもとである結晶が作られるリスクを高めてしまいます。療法食は犬や猫が水を飲みやすくするように調整されています。

取り入れる水分の量を増やすには…

ウェットフードを活用しましょう。

取り入れる水分の量を増やすには…

尿路結石を予防する上で水分の摂取量は重要です。
ウェットフードは70%を超える水分を含んでいます。猫の場合にはもともと水を飲む量が少ないので、ウェットフードを食べさせることで水分摂取量を増やすという方法もあります。

再発を予防しよう

犬と猫の尿路結石は再発することが非常に多い病気です。
食事と生活習慣で再発の予防を心掛けましょう。

再発予防のポイント

犬と猫の下部尿路疾患を予防するためには下のようなことに気を配りましょう。

  1. 犬や猫の尿路結石に配慮した食事を選ぶ。

    尿路結石が治った後に今までの食事に戻して再発してしまったという例はよく見られます。尿路結石に配慮した食事はマグネシウムなどの各ミネラル成分が調整されています。獣医師と相談して、食事を選びましょう。
    尿路結石に配慮した食事を選ぶ。
  2. 犬や猫のおやつに注意する。

    せっかく尿路結石に配慮した食事を与えていてもおやつを与えることによって食事で調整したバランスが崩れてしまうことがあります。おやつを与える際は獣医師に相談しましょう。
    おやつに注意する。
  3. 犬や猫に水を飲ませるように工夫する。

    新鮮な水をいつでも用意してあげましょう。また、ストレスによって運動をしなくなってしまう場合があるため、ストレスの原因となるものは取り除いてあげましょう。
    水を飲ませるように工夫する。
  4. おしっこを我慢させない。

    おしっこを我慢してしまうと膀胱におしっこがたまっている時間が長くなり、尿路結石ができるリスクにつながってしまいます。散歩のときに犬におしっこをさせる場合はこまめに散歩をしておしっこができる機会を増やす、猫の場合はトイレを清潔に保つなど、おしっこを我慢させないような対策をしましょう。
    おしっこを我慢させない。
  5. 犬や猫の肥満を予防する、もしくは既に太っている場合はダイエットをする。

    ~不妊・去勢手術をしている場合にはとくに注意しましょう。~
    肥満による運動不足は尿路結石をつくりやすくなってしまう原因のひとつです。肥満予防に努めましょう。既に太っている場合は獣医師と相談してダイエット(減量)を始めましょう。不妊・去勢手術をしている犬・猫はそうでない犬・猫と比べて肥満のリスクが高くなっています。不妊・去勢手術後は体重のケアと尿路結石のリスクに配慮した犬・猫用の食事を利用するのもよいでしょう。